2023.06.08 amazarashi『騒々しい無人』ライブ感想
ご挨拶
ご無沙汰してます。乾井です。
去る6月8日はamazarashiのアコースティックライブ「騒々しい無人」の公演日でした。
3月の下旬、故郷の北海道から夢を見て上京した私は、落ち着かない生活の中で開催の報に触れました。
”東京単発公演……行きたいが生活に余裕がない状態で行ってもいいものか……そもそもその日、スケジュールを確保することができるのか?”
そんな逡巡も束の間、私は次の瞬間にはAPOLOGIESの最速先行に申し込んでいました。そんなこと考えてる場合か、好きなバンドの公演なんて行くしかないだろう!!ということで参加を決めました。
そんなこんなで始まった東京での新生活、忙しない日々を必死に過ごしているうちに2か月は文字通り矢のように過ぎていきました。私の身の上話は面白くもないので割愛するとして、とにかく開催の報から6月8日という日を迎えるのに体感では1週間もなかったように思います。何なら公演が終了した今でも「騒々しい無人の公演楽しみだな~~」という気持ちでさえいます。そのくらいいいライブだった。
さて、それでは早速ライブの話をしましょうか。今回はツアーじゃないのでネタバレを気にする必要もないし、ガンガン思ったことを綴っていきますよ。語りたいことも大量にあるので巻きでいきます。
ちなみにこの記事は「レポ」ではなく「感想」なので、個人的な曲への思い入れとか私情の話が大半です。
客観的なレポが読みたい人はブラウザバックでお願いします。
なるべく記憶と感情がアツアツかつフレッシュなうちにお届けすることをポリシーとしていますが、誤りや勘違いが含まれている可能性も多分にある点に関してはご容赦ください。
セトリ・雑感
01.ジュブナイル
02.たられば
ⅯⅭ
03.隅田川
ⅯⅭ
04.ロストボーイズ
05.リビングデッド
ⅯⅭ
06.僕が死のうと思ったのは
07.季節は次々死んでいく
ⅯⅭ
08.カシオピア係留所
09.そういう人になりたいぜ
10.ひろ
11.帰ってこいよ
ⅯⅭ
12.さくら
13.馬鹿騒ぎはもう終わり
14.スワイプ
ⅯⅭ
15.夕立旅立ち
ⅯⅭ
16.アンチノミー
……よくしゃべるな今日は!
…………ていうかなんやねんこのセトリの殺意!!!!!
はい。
もうね、やばいです。激やばです。事前の予想では『七号線ロストボーイズ』とそれ以降の新曲を中心に旧譜を3~5曲くらい織り交ぜた感じになるんだろうと思っていましたが、全くそんなことはなかった。
どれを軸にして組んだセトリなのかは神(秋田さん)のみぞ知ると言ったところですが、個人的にはアンチノミーか馬鹿騒ぎ辺りの終盤に向けてのカタルシスを最大限高めるような組み方なんじゃないかと思ってます。そしてそれが私の琴線に刺さること刺さること。
『ジュブナイル』『隅田川』『僕が死のうと思ったのは』『帰ってこいよ』なんかは個人的にとても思い入れの強い曲で、好きな曲と表現するのも憚られるような、もはや信仰の域に達している曲ですらあるのですが、それを抜きにしても、弾き語りでの『リビングデッド』や、後述しますが秋田さんがギターを手放して豊川さんのキーボード伴奏のみで披露されたソウルフルな『ひろ』、”インディーズ時代によくやっていた”という前振りから『スターライト』かな?と思わせてまさかまさかの『さくら』と、いい意味でやりたい放題のセットリストです。
『夕日信仰ヒガシズム』あたりで存在を意識し始め、『地方都市のメメント・モリ』くらいから明確にこのバンド好きだな~と思い始めたファン歴が長いとは言えない私ですら情緒がかき乱されるようなこのセトリ、それこそインディーズ時代から応援しているファンで耐えられた人はいるんでしょうか。
アコースティックライブという性質上、アコギ一本化抱えて一人ステージに立つ秋田さんが、アウトロで掻き回しをやった後「ジャン!」の一音と共に毎回お辞儀にも見えるような動作をしたり、普段ならポエトリーが担うインタールード、次の曲への振りの役割を喋りで補うもののそれが強引だったり下手くそだったりすることの人間臭いいじらしさ、THE FIRST TAKEから入った新規のファンに向けたであろう代表曲を織り交ぜつつ、ストーリーテリングや楽曲同士の詞や音の繋がりの気持ちよさを蔑ろにしない選曲と、今回の公演を形作る要素一つ一つが100点満点中670点くらいを叩き出している非常に満足感の高いものでした。
ライブの度に「最高だった」という言葉を軽率に使ってしまうのがファンという者ですが、今回に関してはこれを超えるライブを今後できるのか?って気持ちが湧いてくるくらい、文字通り今までで「最も(完成度の)高い」ライブだったと思います。セトリを組む際の自由度が極端に高い、アルバムを引っさげない公演だからこそ実現できたクオリティなんだと改めて感じています。
ちなみに冒頭で予想が大きく外れた、といった旨のことを書きましたが、一つだけ的中していた曲がありました。
ライブ楽しみすぎて気が早すぎるセトリ予想をするなど
— 騒々しいDriedwell(乾井) (@inui_daily) 2023年4月29日
ロスボ収録曲を中心にアルバム以降の新曲を揃えて、ツアーで披露された流れ(夏待ち→戸山・スターライト→空白車窓)を弾き語りというバンドとは違う形で表現するんじゃないかと
馬鹿騒ぎは私が聴きたいだけで正直くる可能性は比較的低いと思ってる pic.twitter.com/3dF4YfaFw6
そういやいつかのセトリ予想で「半分願望」として入れた馬鹿騒ぎ、冷静に考えると公演タイトルからしてもコロナまわりの社会情勢からしても歌われる可能性結構高いのでは?って気がしてきてる
— 騒々しいDriedwell(乾井) (@inui_daily) 2023年5月29日
これも後述しますが、今回は”アコースティックライブ”であって”弾き語り”ではない、という部分でコアを担った『馬鹿騒ぎ』が的中したのが嬉しくて、イントロが流れた瞬間盛大にニヤけました。今週は馬券でも買ってみようかしら。(買いません。)
それでは一つ一つよかった要素を掘り下げていきましょうか。全曲やってると頭と情緒がオーバーヒートしそうなので、個人的に強く印象に残っている部分だけ拾い上げていこうと思います。概ねセトリの順番通りになるように綴っていきますね。
ジュブナイル
一発目。冒頭でも言った通りこの曲は私の中で好きを通り越してもはや信仰の域に達している曲なのですが、それが一発目。当然号泣&全身鳥肌。直前に理論武装解除のセトリを見ていたので1,2曲は同じ曲をやるかもな、そしてそれは『隅田川』や『夏を待っていました』が有力だろうなと思っていたらまさかの『ジュブナイル』。
ド頭から”涙ぐんで”のところの高音の伸びやサビの”君のまま”の部分の裏声で今日のコンディションが最高であることを見せつけられ、公演への期待値が天井突き破って月まで到達する勢いで高まっていきました。
冒頭5曲・ⅯⅭ
そんなジュブナイルと、”amazarashiの秋田ひろむです”という口上で幕を開けた本公演。
2曲目は『たられば』で、弾き語りの定番だよね、って感じで割と穏やかな気持ちで聴いていました。とはいえ現地で聴くのは何気に初めてだったので、弾き語りならではの息遣いや声がバンドの時より真っ直ぐ胸に届いてくるのもあってライブだとこんなに化けるのか……と感動はしていましたが。秋田さんは結構口呼吸で歌ってるのが分かってちょっと新鮮だったな。
といったところでⅯⅭ。
”長いことやってると、昔は好きだと思えなかった曲もしばらく距離を置いているうちにいい曲だなって思えることがある。次にやるのはそういう曲”といったようなニュアンスだったかな。
いつかのインタビューか何かで「自分で好きだと思えない曲はリリースしない」というようなことを言っていたのが印象的だったので、個人的にはそのⅯⅭ自体がちょっと意外だったのですが、そうして披露されたのが『隅田川』。
学生時代、4年間ずっとつるんでいて、今回もなんと北海道からこのド平日に遠征してきてくれた大切な友人が私をきっかけにamazarashiにハマり始めた最初期に好きだったと言っていたこともあり、私としてはとても思い入れの強いこの曲を当人と一緒に聴けたことがとても嬉しかった。
『隅田川』が終わって拍手がやみ、去年のロストボーイズツアーよろしく何の前触れもなしに紗幕が上がってまた喋り出す秋田さん。
”体を壊したりして落ち込んでいる時期に、地元の友人と遊んだりして作った曲。昔の自分であれば繰り返しの日常から抜け出せというメッセージにしていたが、最近はそういう日常を肯定したいと思う。”
そんな前振りから相も変わらず口からCD音源な『ロストボーイズ』が披露され、理論武装解除とは違う、今のamazarashiのライブが始まるんだなと思わせてからの、次の曲でモニターに映し出される鎖の映像と聞き慣れないリフ。
”翻って誰しもが~”
弾き語りでリビングデッドやるなんて聞いてませんけど!!?!?
あまりに予想外すぎる選曲に驚くとともに、みんなと違うことに怯える少年期の心を歌う『ロストボーイズ』から、正しくて清廉潔白な人間であることを諦める『リビングデッド』に繋げるその発想の上手さに舌を巻き、ずっと二ヤつきながら聴いてた。
秋「死に切れぬ人らよ歌え」⇒客「……」がやっぱりどうしても寂しくて、サビのおおおおおーはずっと口パクで歌ってました。声が漏れてたらこの場を借りてごめんなさいしておきます。アコギ一本でこんなに格好良く仕上げられるもんなんですねこの曲。円盤はよ。
僕が死のうと思ったのは
『リビングデッド』が終わり、さてここから『スワイプ』や『アンチノミー』なんかの新曲の流れかな?と予想していたところでまたもⅯⅭ。
”自分には生きながらにして死んでいる、みたいな時期があって、そういう曲は受け入れられないだろうと思っていた。だけど似たような状況に置かれている人は案外いるもので、共感を得られるんだと教えてくれた曲がある。”
ⅯⅭの時点でまさか……?となっていたところ、ステージ上に灯る2本の蝋燭の演出ですべてを察した私、またも号泣。ロストボーイズツアーでも聴いたこの曲を今度は弾き語りで聴かせてもらえるなんて、こんな幸せがあっていいのですか??の気持ち。
頭から終わりまで「僕が死のうと思ったのは~~だから」と言っている内容自体は全く変わらないのに、ラスサビの「まだあなたに出会ってなかったから」に限っては「貴方に出会えたからこんな世界でも生きたいと思えた」という真逆の意味に反転するレトリックがもはやいち楽曲の歌詞を飛び越えて一つの文学作品、詩として巧みすぎるんですよね。幼い頃から文学に惹かれ、小説や漫画を読み耽って育ってきた私はこの曲が本当に本当に大好きなのですが、それをまさか2公演連続で聴けるなんていうサプライズに大袈裟じゃなく涙が止まらなかったです。
落ちメロの「貴方が綺麗に笑うから」の部分では、実に8小節の間ギターを弾く手を止めてアカペラで歌声が披露され、詩だけを心行くまで堪能したあの数秒間は筆舌に尽くし難い幸福な時間でした。円盤化はよ!
季節~ひろ
不意の『僕が死のうと思ったのは』でちょちょぎれるぐらい溢れた涙を拭う間にチューニングを済ませて次の曲へ。これはワンストロークでわかる、もはやおなじみとなった『光、再考』の終わりのフレーズから『季節は次々死んでいく』へとつなげる流れ。
ファーストテイクですら聴くたびに高揚が収まらないのに、生でそれを浴びさせられた日には耐えられるわけもなく、途方もない目標を追いかけて忙しない日々に追われている自分の現状も相まってⅭメロの”疲れた顔に~”のくだりで大号泣。もう勘弁して、これ以上いじめないで、の気持ちで食い入るようにステージを見つめてました。
ラスサビの”どうせ”を”後世”と歌い間違えていたけど、秋田さんも高揚してるんだろうと思ったらなおさら感動して涙が次々溢れてきました。やっぱライブっていいな……。
ⅯⅭ。
”人々がなぜ感動するかを最近考える。例えばハッピーエンドの作品に感動した時、エンディングだけを見て感動するんじゃなくて、そこに至るまでの苦悩や葛藤があるからこそ感動が生まれるんだと思う。つまり、痛みというのは僕等の共通言語なんだと思う。”
……曲振りが下手!
感動のくだりに共感しながら共感しながら聞いていた私の心の中で、「共通言語」というキーワードが聞こえた瞬間に粗品がすかさずツッコミを入れました。あるいはカイジの大槻班長かもしれない。
もうちょっとなんかいいように言えたでしょ!でもそんな口下手なところも可愛いな!ていうか次の曲カシオピアかい!!
1秒未満に脳内をこの思考が駆け巡り、比較的新しい作品ながらまたも個人的な好みにかなりぶっ刺さってる曲が来て3曲連続大号泣。本当に振り返れば振り返るほど私の癖(へき)を的確に突いてくるセトリで恐ろしくなってくるわ。
この曲はやっぱり歌い慣れてないからなのか、1サビの「深く沈める」を入り損ねて「……kく~沈める~♪」になってたり、ぽつぽつミス(?アレンジかも)があった印象。個人的には歌詞を飛ばしたり演奏ミスったりするのもライブの醍醐味だと思うのでどんどんミスってほしい。
そんなこんなでヘトヘトになった私の情緒にさらにさらに追い打ちをかけるイントロのアルペジオは『そういう人になりたいぜ』。この曲から豊川さんが登場。前触れもなければ曲が終わった後に触れるでもなく、そこにいるのが当然のように二人で演奏。もちろんこれも大好きな曲で号泣④。もうやめて!乾井のライフはゼロよ!
と、曲が終わって暗転中に何やら「ゴトン」という音が。スポットライトが当たってピアノのイントロが流れると、なんと秋田さんがギターを置いているじゃないですか。そしてこのイントロは聞き間違えるはずもない、そう、『ひろ』。
カシオピアからそういう人はちょっと流れとして不自然だなあと思ったらこっちへの振りだった。演奏を聴きながら私の頭によぎったのは、開演前にご飯を食べながら件の友人と交わした会話。
友人「自分は『ひろ』が3本指に入るくらい好き。今回もぜひ歌ってほしい」
私「確かにいい曲だし好きだけど、あれは秋田さんにしか歌えない、ものすごいパワーのあるメッセージソングだよね。「ひろ」さんのことを知らない自分が歌うのはなんか違う気がして、カラオケでも歌うの躊躇する」
タイムリーがすぎるのよ!!
ギターを置いたことで歌に集中できたからか、これまでより幾分もソウルフルに「ひろ」へのメッセージを歌い上げる秋田さんの姿にまたまたまたまたまた大大大号泣&スーパー鳥肌。とりわけⅭメロの「なあ、ひろ」からの魂の籠められっぷりは尋常じゃなかった。あんなん泣かないで聴ける人間おらんやろ。もうこれ以上情緒搔き乱されるのは無理やっちゅーに……。
そしてとどめの……
『帰ってこいよ』!!!!!!!
殺す気かっての!!!!!!!!!!!すでに5回くらい死んでるけど!!!!!!!!!!!!!!
ボイコットが発売された当初から、アルバムの中、いやamazarashiの中でも5本指に入るくらい好きな『帰ってこいよ』を、この終盤に、もういいだけ感動で泣かされた状態で浴びせられたらもうね、どうしようもない。演奏がどうとかステージ上での動きがどうとか、そんなん気にしてられる余裕なくて何も書けることがないです。ただ本当に心を奮い立たせられるパフォーマンスだったことは確かです。
ⅯⅭ。
"アマチュア時代、東京に住んでた頃のことを書いた曲。居酒屋やカフェでよくやってた曲で、「あまざらし」ってこういう風に始まったんだなって思えてもらえたら。挫折もたくさん経験したあのころの夢を生きてます。"
この振りで安直に『スターライト』か?違うな、『東京』か、なんて思った私はどうしようもなくニワカでした。
自分自身夢を追って上京し、何の因果か中央線をよく使うものでここ数か月たまたまよく聴いていたこの曲を、まさかライブで聴けるなんて思ってなかった。
私の地元・北海道では例年桜が咲くのはGWの頃なので、桜にあまり春のイメージがなかったんですが、前述のとおり3月末に上京してきたので友人と桜を見に行こうという話になって代々木公園に行ったのも記憶に新しかったからもう大変。何もかもが私にとってタイムリーで、置かれている環境や夢を追うことの焦り、苦悩、葛藤、そういったものを丸ごと肯定して包み込んでくれるような選曲の最後がこれでもうどうしろって言うんだ。
サビ終わりの「さくらーあーあーああーー」にかぶさる豊川さんの「あーあーあ↑ーあー」ってハモリも破壊力抜群。音源だと叫ぶように全力で歌ってるラスサビ終わりの「(さくらさく物語)あーーああ」ってシャウトも、今回はかなり澄んだ高音の出し方で最高のパフォーマンスと言わざるを得なかったです。
雨曝しの代々木公園にて
— 騒々しいDriedwell(乾井) (@inui_daily) 2023年3月26日
――さくらさくら僕らの
さくら咲く物語 pic.twitter.com/f5XET1thbU
もう終わり(終わりで始まり)
『さくら』が終わり、もはや満身創痍で明転を待っていたら聴こえ出したアルペジオ。思わず「そんなことある!?」って声が出そうになるのをすんでのところで堪えた私の目に飛び込んできたのは、これまで参加してきたツアーと同様(ドラムやギターはいつものロック用とは違うけど)のバンドのセット。
マジで馬鹿騒ぎやるのかよ!ていうか何だそのセットは!!!
三線?三味線?みたいな弦楽器の音も混じってて何か凄いアレンジだったんですが、Twitter見てたらどうやらバンジョーという楽器らしいです。打楽器はカホンと、シャララララ~ン✨みたいな音が鳴るやつ(名前を知らない)。
確かに「acoustic live」であって弾き語りなんて一言も言ってないけどさ。あまりにも予想外のことやりまくるし1個1個クオリティ長高いしで感動とか飛び越えて何かイライラさえしました。
ずっと聴きたいと思ってた久々の馬鹿騒ぎ、よかったです。生歌だとやっぱりPayPayには聞こえなかった。
コロナ問題も5類に移行されたことで(表面上は)終わって、令和二年epの曲は今後ライブで披露されることはあるのかな?
世界の解像度や馬鹿騒ぎは汎用性がありそうだけど、令和二年とか曇天は時事に特化した曲だし、太陽の羽化も水槽や後期衝動みたいにぽんとセトリに突っ込めるようなポエトリーでもないし、本当に役目を終えた曲になっちゃうのかな。個人的には令和二年の歌メロとか韻の踏み方すごく好きだからそうなってしまうならとても寂しいところではある。
スワイプ
えっっっっっっっっぐい格好良かった。
馬鹿騒ぎのバンド編成をそのまま引き継ぐ形での演奏。リリースから1か月ちょっとでライブでの初お披露目と相成ったわけですが、リリース当初も同じこと言ったけどやっぱ社会風刺を歌うamazarashiは「良い」んですよ。
『デスゲーム』とか『ミサイル』、『カルマ』なんかを歌ってた頃の初期を彷彿とさせるテーマに、10年以上経った今だからこそ作れる打ち込みを多用したトラック、ダークな歌詞の世界観と裏腹にキャッチ―な歌メロだとか、韻の踏み方から歌詞に使う語彙の1つ1つまで、これまでamazarashiが積み上げてきたものの集大成みたいな曲だと思っててすごく好きな曲です。
そんな曲のライブ初お披露目がオリジナルバージョンじゃなくてアコースティックアレンジだってのも今までにない試みだし、その瞬間に立ち会えたことが本当に嬉しい。amazarashiはこれからもどんどん進化していくんだろうなっていうのを感じさせるパフォーマンスでした。
やっぱりお気に入りなんだね、そして……
突然のバンド出現とアレンジのクオリティの高さに、これまでの号泣ラッシュから一変して縦ノリで音楽を楽しんでいたところでⅯⅭ。
”あと2曲で終わりです。新曲に向けて制作をやってるけど苦戦してて、今日何かヒントがもらえたらなって思ってた。でもそういうのは終わってからわかるもんで、また頑張って、みんなでライブをやれたらって思います。『夕立旅立ち』。”
ⅯⅭでタイトルをはっきり言ったのはこの曲だけだったんじゃないかな?
理論武装解除で初披露されて、折に触れてライブの〆に使われてきた『夕立旅立ち』。アコースティックアレンジとの親和性も言わずもがな高くて引き続き縦ノリで聴いてた。直前のⅯⅭであと2曲って言われて、心から終わってほしくない、ずっとこのライブが続いててほしい!!って強く感じていたことを覚えてる。
ラスサビの「懐かしい夢たち」を「新しい~」って歌ってた。まあ新しい夢もそうそう覚めないし問題ないやろ!って仏の顔して聴いてました。何だかんだライブ映えする曲で、普段あんまり積極的に聴くわけじゃないけど公演の度にいい曲だなって思わされる、不思議な魅力のある曲だと思います。
ⅯⅭ。
”皆さんにとってamazarashiはたくさんいるアーティストの中の1つでしかないかもしれないけど、自分にとっては紛れもなく人生そのもので。そんな自分の人生と皆さんの人生が交わるのがライブっていう場だと思う。こんなにもたくさんの人に来てもらえてうれしい。また次、10年後でも、20年後でも。また会いましょう。生き延びてください。”
このⅯⅭ。Twitterでも皆さん仰っていましたが、やばいですよね。
もちろん他に好きなアーティストはいるけど、amazarashiの奏でる音楽が、叫ぶ言葉が唯一無二のレベルで大好きだってのは多くのファンがそうだと思うし、8000人の箱を埋めてもそんなことを口走っちゃうのが人間らしくて不器用で、こんな人が描く言葉だからこそ信じていられるんだなって思いました。
そして「10年後でも、20年後でも」ってくだり。裏を返せばこれは10年、20年経ってもわいはきっとamazarashiを続けているよって宣言のようにも思えて。凄く胸が熱くなるⅯⅭだった。
そんな振りから繰り出される最後の曲。正直私は『ナモナキヒト』か『空白の車窓から』だと思ってたんですが、これだけグッズのデザインやらこれまでのセトリ(『スワイプ』『カシオピア係留所』)でフラグ立てておいて『アンチノミー』やらないわけないよね。
正直個人的に『アンチノミー』は「ニーアのために作られた曲」って印象が強すぎて、アルバム以降の新曲は全部やるだろうと思いながらも普通にセトリに組み込むとどうしてもこの曲だけ浮いちゃうって気持ちがぬぐえなかったからどう扱うんだろうって思ってたんですよね。
結果から言うと、今回の形で組み込むなら大トリを飾るに相応しい曲になっていたと思います。
この曲ではバンドメンバーははけて、秋田さんの弾き語りに戻ったので、豊川さんの”壊れたヨルハ”コーラスがなくて、ⅯⅭでこれだけ丁寧に前振りをした上でなら「ニーアの曲」ではなく「amazarashiのいち楽曲」として純粋な魅力が伝わる披露の仕方だったと。
逆に言えば、仮に『アンチノミー』以降の新曲が全部収録されたアルバムがリリースされて、それを引っさげてのツアーでいつもの(ロック)バンド形式が初お披露目だったら、いつまでも「ニーアの曲」ってイメージは払拭できてなかったと思う。
前述の通りライブの〆としては『ナモナキヒト』とか『空白の車窓から』とか、これよりもっと相応しい曲はあると思うけど、こと今回の公演に限って言うならば『アンチノミー』がトリで大正解だったと思う。
アウトロで「感情は持たないでください」って歌うアレンジをしてたけど、それもすごくグッと来た。願わくば次はバンドバージョンで生『アンチノミー』を聴きたいと思うことができて、最後の最後まで新しい発見や魅力に満ちた本当に素晴らしいライブでした。
ラストは「ありがとうございました!amazarashiでした!」の挨拶で〆。
最初は「amazarashiの秋田ひろむです」だったので、あまりにもぬるっと現れぬるっと消えていった豊川さんはじめバンドメンバーに秋田さんが気付いてなかったということではないようです。
おわりに
深夜テンションの駄文を長々とお読みいただきありがとうございました。
今回の公演は、「乾井がamazarashiを好きな理由」をぎゅっと濃縮したようなセトリ、演出、ⅯⅭのライブだった気がします。
個人的には冒頭でも言った通り「今後これを超えるライブを開催できるのか??」といった印象もぬぐえませんが、どうせ次の公演が終わったころには「最高だった……」とか 宣ってると思います。なぜならオタクなので。
最後になりますが、amazarashi13周年おめでとうございます。
新参者のファンではありますが、変わらない信念のもと、自分自身がその時叫びたい言葉を鳴らしたい音に乗せて奏でるamazarashiに、きっと10年後も20年後も着いて行きたいと思っています。
ではまた。